Apple Musicの話

背景

海の向こうではSpotifyみたいなサブスクリプション型の聴き放題サービスがかなり市民権を得ているようだけど、日本でも今年の7月くらいに同じようなサービスがいくつかリリースされた。
いくつか試してみたところ、LINE MUSICは品揃えが田舎のTSUTAYAにも及ばないレベルだったので切り捨て、AWAはローカル保存機能がなかった(今は追加されてる)ので却下、残ったApple Musicを使うことにした。
以下、3ヶ月使ってみた感想。

いいところ

  • 洋楽の新譜チェックに最適
    洋楽の新譜を追っかけようと思ったら輸入盤がメインになるんだけど、円安の影響で500円そこら高くなってるのでわりと厳しい。じゃあレンタルでと考えても、国内のインディペンデントから出てる一部を除いて、解禁されるのが1年後なので、あまり意味がない。
    Apple Musicでは、ほぼタイムラグなしに新譜が網羅されているのでめちゃくちゃ便利。国内盤が出ないようなインディーの作品も普通にあるので、たとえばPitchforkとかの高得点の作品を片っ端からチェックするみたいな使い方も余裕でできる。
    個人的にはここがかなり気に入ってる。

  • 体系立てて聴ける
    新譜のレビューを読んでると、同時代もしくは過去のアーティストの名前がよく出てくる。今まではそういう関連するアーティストをYouTubeで検索して曲単位で聴いたりしてたんだけど、Apple Musicがあればアルバム単位で辿ることができる。もちろん旧譜の品揃えも十分にあるので、過去作のチェックも簡単になった。

  • ネイティブアプリで完結できる
    iPhoneとかiPod touchを持ってる人なら、ミュージックアプリを使って音楽を聴いてる人が多いと思う。Apple Musicはミュージックアプリに機能追加という形で搭載されているので、心理的なハードルはわりと低い。
    ミュージックアプリの検索窓にアーティスト名を入れて検索ボタンを押せば、ローカルライブラリとほとんど変わらない手触りで膨大なデータベースにアクセスできるし、「オフラインで再生可能にする」を選択すれば、PCから同期した曲と全く同じように再生できる。
    個人的にはここが1番衝撃的で、たとえばYouTubeで聴きたい音楽を探すとか、last.fmネットラジオを聴くとか、ネットに繋ぐことで膨大なライブラリにアクセスするサービスとは根本的に違うように思う。「音源を手に入れる→PCにインポートする→デバイスに同期する」という、いわば音楽を所有する感覚に近いものがあって、しかもそれが数タッチで完結してしまうことがカルチャーショックだった。

よくないところ

  • 動作が不安定
    オフラインで聴けるようにとダウンロードしたはずが、少し経つとローカルから消えてしまっていたり、iCloudのライブラリをオンにしたままPCと同期するとプレイリストが消えたり、わりと致命的なのではというレベルで不具合がある。
    たぶんネットで探せば解決法はあると思うけれど、地味にストレスフルだし、後者についてはデータが消えかねないのでだいぶ億劫。

  • ジャケが勝手に変わる
    Apple Musicの仕組みとして、ローカルに保存されている音源も一度iCloudに吸い上げたうえで、データベース上の同じ音源を元データから置き換えてデバイスに下ろしてくる、という流れがある。
    この工程でローカルに保存してた音源のジャケットが、全く違うジャケットに置き換えられることが多々あって、だいぶ辟易する。僕はインポートしたときに、自分でウェブでジャケットを探して貼り付ける作業をほぼ必ずしてるんだけれど、解像度とかサイズまで考えて選んだジャケ画像を勝手に置き換えられると、聴く気すら削がれる。
    iOSのミュージックアプリは、ジャケットが比較的大きく表示されることが個人的には気に入っていて、ジャケットを手元に置きたいというオタク気質に訴求するものだと思っているので、見逃すには大きい不具合だと思う。

  • iCloudの曲数制限
    母艦PCでもApple Musicを使おうとすると、前述のとおり一度iCloudミュージックライブラリにローカルライブラリを吸い上げてもらわないといけないんだけれど、iCloudに保存する曲数に制限があるらしく、何度試みてもエラーになる。
    もっとも、ネットワーク上で聴くことはできるので、使えないというわけではない。ただ、オフラインで再生可能という機能が使えなければ、Apple Musicをわざわざ使う意味はほとんどないと個人的には思うので、ここが改善されない以上控えめに言っても魅力は半減する。

  • 音源を所有できない
    上の方で、オフラインで再生可能にすることは音源を所有する感覚に近いと書いたけれど、契約を切れば音源は全て聴けなくなる。
    もはやCDで音楽を聴くことはほとんどなくなったとはいえ、現物を手元に置くことで得られる充足感は確かにあるわけで、mp3などのデータ購入よりさらに所有感の薄いこのサービスへの抵抗感は拭えない。

  • 邦楽が少ない
    特にメジャーがほとんど使い物にならない。インディーのほうはかろうじて使えるという印象。アニソンは全滅と言っていいくらいで、あまりアニソンに所有欲がない僕にとっては残念なところ。

これからどうするか

ここまで書いてきたとおり、決して万能ではなくて、かなり痛し痒しなサービスなので、無料試用期間の終了を前にして今後のことを決めかねている。
CDレンタル(特に洋楽)に関しては、Apple Musicでかなりの部分が代替可能で、月額980円という金額は僕がレンタルに費やす金額とほぼ等価ということを考えると、レンタルからApple Musicに乗り換えるのもアリかとは思う。
ただ、邦楽が不便なうえ、データすら所有できないのに、金額がほぼ等価というのは実質損してるのではという気もする。洋楽の新譜が聴き放題という利益が、この損失を補えるかどうかが判断基準になりそう。
とりあえず、ひと月契約してみて様子を見ようと思う。