にわかファンによるNFL2021プレイオフガイド

2020-2021年のNFLシーズンも17週16試合のレギュラーシーズンを全て消化し終了しました。ここから勝ち残ったチームによって、2月7日にタンパで行われるスーパーボウルへの出場を懸けてプレイオフが行われます。

アメリカのプロスポーツにありがちな話ですが、レギュラーシーズンはプレイオフ出場権を得るための長い長い前哨戦でしかなく、今シーズンはここからが本番となります。実際に各チームも1試合1試合に照準を合わせて入念に準備するため、レギュラーシーズンよりレベルの高い緊迫した試合が多く、今までNFLを見たことがない人がプレイオフから見始めたとしても楽しめる確率は結構高いのではと思います。

 

とはいえ、レギュラーシーズンの動向や各チームの事情を全く知らずに見ても楽しめる要素が減ってしまいもったいないので、個人的な各チームの印象なんかを適当に記して、NFLって興味あるけどとっかかりがないんやわみたいな人の一助になればと思い、文章を残すことにしました。

表題に予防線を引いたとおり、自分はにわかファンなので各チームに関するコメントはほとんどQBをはじめとしたオフェンスに関するものばかりになります。ちゃんとしたアメフトファンにとってはにわかが死ねよ的な感じになるかもしれませんが、逆にこの程度の知識しかなくてもドンハマりできる魅力的なスポーツなんだなということをわかっていただければ幸いです。

ちなみに、日本での放送はDAZNとG+で全試合生放送、NHK BSで録画放送が行われます。既にそれぞれのチャンネルを契約済なら見て損はないと思います。

NFLレイオフのしくみ

NFLAFC(American Football Conference)とNFC(National Football Conference)の2つに16チームずつ分かれており、さらに各カンファレンスが東西南北の4地区に分割されています。

レイオフに出場できるのは各地区の優勝チーム(4チーム×2)と、優勝チームを除いた各カンファレンス成績上位3チーム(×2)となっており、カンファレンスあたり7チームがプレイオフで戦うことができます。だいたい全チームの4割強が出場できる計算です。

試合はワイルドカードラウンド(カンファレンス準々決勝)→ディヴィジョナルラウンド(カンファレンス準決勝)→カンファレンスチャンピオンシップ(カンファレンス決勝)の順に行われ、カンファレンスチャンピオンシップに勝利したチームがスーパーボウル出場権を得て別カンファレンスのチャンピオンと相対することになります。

各カンファレンスで勝率首位のチームはワイルドカードラウンドを免除され、ディヴィジョナルラウンドからの登場となります。

また、基本的に7試合4勝先取制の他スポーツと違い、NFLのプレイオフは全て1試合のみです。1発勝負です。それゆえに下位シードのチームであっても番狂わせの可能性が十分にあるスリリングさが魅力でもあります。

 

レイオフ出場チーム

カンザスシティ・チーフス(AFC1位 西地区優勝 14勝2敗)

昨シーズンのチャンピオンチームは今シーズンも危なげなくカンファレンストップとなり、ワイルドカードラウンドはシードで免除となりました。

このチームはなんといってもQB(クオーターバック)のパトリック・マホームズでしょう。プロスポーツ史上もっとも巨大な契約となる10年540億円の契約を結んだことからもわかるとおり、2020年シーズンのNFLにおいてもっとも価値のあるプレイヤーです。

プレイスタイルもその契約に全く見劣りすることなく、時に超ロングパスをこともなげに通し、時にバスケットボールのごとくトリッキーなノールックパスを通し、時にディフェンスのプレッシャーを自らかわしながら長距離を走り前進するという、フットボールIQと身体能力を併せ持った圧倒的なスーパースターです。スタッツやプレイスタイルだけに止まらず、不利な試合展開であってもさも当然かのように逆転劇を演出することが多く、五条悟に対峙した漏瑚の心持ちになること請け合いです。しかもイケメン。

 f:id:grisuhon:20210109212956j:plain

 この活躍はもちろんパスの受け手が整っているからでもあり、TE(タイトエンド)ながらパスレシーブの獲得ヤードが2位のトラヴィス・ケルシーの安定感は目を見張るものがありますし、「チーター」の異名を持つWR(ワイドレシーバー)タイリーク・ヒルのスピードには度肝を抜かれます。マジで速すぎて笑えてきます。

ディフェンスも成績は中位ですが、S(セイフティ)タイラン・マシューなど華があり、見ていて間違いなく楽しいチームだと言えるはずです。

 

グリーンベイ・パッカーズ(NFC1位 北地区優勝 13勝3敗)

人口わずか10万人程度のグリーンベイを本拠地としながら、8万人収容のスタジアムは毎試合満員、NFLで3番目に古いチームであり、アメリプロスポーツ唯一の市民球団という異色かつ強豪チームです。なんでか知らんけどカンニング竹山の推しチームでもあります。

現在の主力選手はQBアーロン・ロジャース。2010年にスーパボウルを制覇するなど怪我をのぞいて10年以上スターティングQBを務めます。何度か限界説が浮上するものの、今シーズンはタッチダウン48、パス成功率70.7%と圧倒的な数字を残しMVP最有力候補となる活躍を見せ衰えを感じさせません。WRデヴォンテ・アダムスもMVP級の数字を残し、QBを守るオフェンスラインも超強力でこの好成績を支えています。

ただシーズンを見てると強いことは強いんですが、圧倒的という感じでもなく、過去のプレイオフでも期待されながらあっさり負ける印象があるので、どこまで勝ち残れるかは正直なんとも言えないなという感じです。

 

インディアナポリス・コルツ(AFC7位 南地区2位 11勝5敗) VS バッファロー・ビルズ(AFC2位 東地区優勝 13勝3敗)

www.youtube.com

ビルズは3年目QBのジョシュ・アレンがブレイクし、25年ぶりに地区優勝を果たしました。ちなみにAFC東地区は昨シーズンまでニューイングランド・ペイトリオッツが11連覇していました。エグ。

アレンは、恵まれた体格の強肩から繰り出されるパスと、自らボールを持って前進する機動力を併せ持ち、その能力を遺憾無く発揮したシーズンでした。

そのパスのメインターゲットとなったのが、ミネソタ・バイキングスからトレードで加入したWR(ワイドレシーバー)のステフォン・ディグス。Diggs!! Sidline!! Touchdown!! Unbilievable!!!でおなじみのディグスですが、その能力を古巣以上に発揮し、シーズン最多パスヤードを記録しました。RB(ランニングバック)のデヴィン・シングルテリーも獲得ヤード数はそれほどながらも存在感を見せつけました。

チームとしては3rdダウン更新率がリーグトップという粘り強さも備えています。

コルツはロサンゼルス・チャージャーズからFAとなったQBフィリップ・リバースを獲得したものの、肝心のリバースが期待された活躍には及ばず、かろうじてもっとも低い順位でプレイオフに滑り込みました。まあもうリバースも39歳やからね。

ちなみに彼はスーパーボウルに出たことがないなかではもっとも成績を残しているQBで、チームに恵まれないのかチームを勝たせる能力がないのか、いずれにせよ個人能力に見合った評価を受けることがなかった不遇な選手で個人的に惹かれるものがあります。

おそらく順当にビルズが勝つことになるだろうと思いますが、試合内容とは別に極寒の地バッファローで雪の中の試合を見たいと勝手に期待しています。

 

ロサンゼルス・ラムズ(NFC6位 西地区2位 10勝6敗) VS シアトル・シーホークス(NFC3位 西地区優勝 12勝4敗)

youtu.be

 NFC西地区同士の対決となる試合。シーホークススーパーボウル優勝経験もある中堅のQBラッセル・ウィルソンを中心としたチームです。ウィルソンはクセの強いNFLのQBのなかでも最も優等生然とした選手で、個人的にはとても好みです。最近増えつつある黒人エースQBの先鞭をつけた選手でもあります。

2年目のWRであるDK・メトカーフや中堅のタイラー・ロケットがアクロバティックなパスキャッチを見せ、勝負強さも併せ持ちます。

シーズン序盤は強力なオフェンスに比してあまりにザルなディフェンスが懸念点でしたが、試合を重ねるにつれて、S(セイフティ)ジャマール・アダムスやLB(ラインバッカー)ボビー・ワグナーなどタレントの揃ったディフェンスが安定を見せるようになりました。一方でオフェンスは序盤の爆発力がなりを潜めてしまったように見え、強いながらも突き抜けるものがないという印象です。

一方のラムズは、ハイパーオフェンスでスーパーボウルに進出した2年前とはうってかわって、リーグ最強ディフェンスを擁してプレイオフに進出しました。DT(ディフェンシブタックル)のアーロン・ドナルドは相手QBに容赦無く襲いかかり、CB(コーナーバック)のジャレン・ラムジーは相手のパスをことごとくシャットダウンします。

シーズン中の対戦ではラムジーに押さえ込まれたシーホークスのオフェンスがどのような対策を見せるかが見所のひとつになりそうです。

ラムズQBのジャレッド・ゴフがシーズン最終戦で親指を相手ヘルメットにぶつけて骨折し、かろうじて出場できるかどうかなので、シーホークス有利かというところ。

 

タンパベイ・バッカニアーズ(NFC5位 南地区2位 11勝5敗) VS ワシントン・フットボールチーム(NFC7位 東地区優勝 7勝9敗)

www.youtube.com

バッカニアーズは言わずと知れたGOAT(Greatest of All Time)ことQBトム・ブレイディを擁して13年ぶりにプレイオフ進出を果たしました。ブレイディの能力は往年と比べて間違いなく衰えていますが、マイク・エヴァンスやクリス・ゴッドウィンというリーグトップクラスのWR、ペイトリオッツでのホットラインで黄金時代を謳歌したTEロブ・グロンコウスキなど豊富なパスターゲットの存在のおかげで、最上位のパスオフェンスを形成しています。QBを守るオフェンスラインも充実した成績を残しました。

一方のワシントンは、元チーム名のレッドスキンズが人種差別的というかねてからの批判に応じる形でチーム名を失って今シーズン開幕を迎え、ヘッドコーチのロン・リベラが扁平上皮がんの診断を受けるなど混迷を乗り越えてプレイオフ進出を勝ち取りました。

所属全チームが負け越し、弱小とバカにされたNFC東地区をかろうじて優勝したチームらしく戦力不足は否めませんが、ディフェンスはラムズに次ぐ強力さを見せ侮れません。昨年ドラフト全体2位のDE(ディフェンシブエンド)チェイス・ヤングが評価の高さに違わぬ活躍を見せ、過去の大怪我から治療に伴う感染症で命の危険すらあったベテランQBアレックス・スミスは見事カムバックし、そつのないプレイでチームを勝利へ導きました。

ワシントンのオフェンスの貧弱さに加え、怪我によりスミスの出場も危ぶまれている状況でバッカニアーズの優位は明らかですが、強力オフェンスと鉄壁ディフェンスのしのぎの削りあいを期待したいところです。

 

ボルティモア・レイブンズ(AFC5位 北地区2位 11勝5敗) VS テネシー・タイタンズ(AFC4位 南地区優勝 11勝5敗)

www.youtube.com

昨年のプレイオフの再戦となる対戦カード。昨年は、リーグを席巻し圧倒的優勝候補と見られていたレイブンズをタイタンズがまさかの蹂躙という結果でした。レイブンズとしてはリベンジなるかという試合です。

タイタンズはRBデリック・ヘンリー。こいつがヤバすぎ。RBはボールを持って進む役割が多く、タックルを受けやすいポジションなので基本的に当たりを強くするためにゴツい選手が多いんですが、ヘンリーはそのなかでも別格。タックルしてくる選手を片手でなぎ倒し、仮にタックルを受けてもものともせずエンドゾーンまで駆け抜ける。強すぎて1人だけ流れる時間が違うように見えるレベル。ヘンリーを止められるかどうかが勝敗に大きく関わってきます。

QBライアン・タネヒルマイアミ・ドルフィンズから移籍後に能力が開花し、エリートQBと言って差し支えない成績を残しました。パスターゲットであるWRのAJ・ブラウンも優秀です。

一方でディフェンスはパスランともにリーグ最弱レベルで、鉄球鍋蓋を地で行くチームです。

それに相対するレイブンズは、昨シーズンMVPのQBラマー・ジャクソンを中心としたリーグ1位のランオフェンスを見せるチームです。ジャクソン自身がシーズン1,000ヤードとトップクラスのRB並みのラン獲得ヤードを記録しており、とにかく足が速い。よく走るQBいわゆるモバイルQBはイロモノ扱いされがちですが、ランのレベルも高くパスもそれなりに捌けるため稀有な存在です。昨シーズンのプレイオフ惨敗と今シーズン序盤の成績により評価は下がりましたが、まだ見限るには惜しい選手です。

ディフェンス面でも失点はリーグ2位を記録するなど、伝統的にディフェンスが強力なチームです。

 

・シカゴ・べアーズ(NFC7位 北地区2位 8勝8敗) VS ニューオリンズ・セインツ(NFC2位 南地区優勝 12勝4敗)

www.youtube.com

セインツはブレイディに次ぐ歴代通算タッチダウン数2位のQBドリュー・ブリーズを筆頭とした充実の戦力で今シーズンもプレイオフに進出しました。ブリーズはシーズン中に肋骨を複数骨折する怪我を負ったものの終盤になんとか復帰し、プレイオフでも出場予定で華麗なパスオフェンスが見たいところですが、41歳となりさすがに往年の神通力は衰えている印象です。ただ、レシーバー陣も充実しているのと、RBアルビン・カマラを中心としたランオフェンスも爆発力を秘めています。

また、ブリーズ欠場中にQBを務めたテイサム・ヒルはQBでありWRでありRBでありTEでもあるという基本的に複数ポジションを兼ねることが少ないアメフトにあって非常に稀有な存在で面白い選手です。いつだかのテレビ中継で「ポジション:テイサムヒル」とかいういちびった選手紹介されたりしてます。

べアーズはシーズン序盤の謎の連続逆転劇が貯金となって、なんとかプレイオフに滑り込みました。個人的に1番応援しているチームなんですが、とにかく貧弱なオフェンスと上の下のディフェンスという印象で、正直勝ち筋が見えません。2017年ドラフト全体2位のQBミッチェル・トゥルビスキーはそこそこの活躍を見せるものの強豪チーム相手には力不足と言わざるを得ず、ディフェンスもLBカリル・マックやレイクオン・スミスなど優れた選手は揃っているはずなのですが、メンツに値する成績は残せていません。

シーズン中盤の絶望的に崩壊したオフェンスと比べると、RBデヴィッド・モンゴメリーが活躍するなどランに重点をおいた終盤は改善を見せましたが、ランディフェンスに優れたセインツにどこまで通用するかは疑問です。

 

クリーブランド・ブラウンズ(AFC6位 北地区3位 11勝5敗) VS ピッツバーグ・スティーラーズ(AFC3位 北地区優勝 12勝5敗)

www.youtube.com

スティーラーズは超強力ディフェンスとベテランQBベン・ロスリスバーガーを中心に激戦区となったNFC北地区を制しました。

開幕から11連勝と絶好調のシーズンでしたが、感謝祭の試合が対戦相手の事情(コロナクラスター発生)により複数回延期されスケジュールが乱れまくったせいで、その後3連敗してしまい、怪我人も増えたこともあり一時期の勢いは失われてしまいました。

それでも、スーパーボウル2度制覇の実績を持つロスリスバーガーの能力はまだまだ最前線レベルを保っていますし、声に出して読みたいアメフト選手名ランキング1位ことWRジュジュ・スミスシュースターは性格もプレイスタイルも派手で魅力があります。最近の試合で相手チームのロゴの上で踊っておちょくってたら負けた上に怒られたからもうしませんと宣言したニュースもあったりしました。かわいいね。

ディフェンスも、LBながら相手QBに怒涛のプレッシャーをかけるTJ・ワットや、レシーバーのカバーに優れたSミンカー・フィッツパトリックなど、特にパスディフェンスはリーグ最高峰のレベルを誇ります。あとミンカーの顔が好き。

f:id:grisuhon:20210109211501j:plain

 ブラウンズはNFL最長のプレイオフ未出場記録に終止符を打ち、18シーズンぶりにプレイオフに駒を進めました。戦力均衡のシステムがどのスポーツよりも整備されているNFLにあっても弱小チームは存在するもので、ブラウンズはその代名詞とも言える存在でした。2016〜2017年の2シーズンでは32試合でわずか1勝、2017年シーズンは16試合制となってから史上2チーム目のシーズン全敗を記録するなどドン底でしたが、そこはやはりNFL、下位チームに与えられる高順位のドラフト指名権を駆使するなどして、やっとこさカムバックを達成しました。

中心選手は全敗シーズンに得た全体1位指名権で獲得したQBベイカー・メイフィールド。強気でビッグマウスとエンタメ性に富む選手ですが、彼をスターターに据えてからチーム成績が上向いたことを考えるとやはり優秀な選手ということなんでしょう。メイフィールドを守るオフェンスラインはリーグ最上位の成績で、レシーバー陣もWRジャーヴィス・ランドリーや、良くも悪くもNFLナンバー1セレブリティであるオデル・ベッカム・ジュニアなどスター揃いです。

ただ、ベッカムは既に怪我でシーズンエンド、プレイ指示を行うヘッドコーチはコロナ陽性で帯同不可と状況的には非常に厳しく、順当にスティーラーズが勝ち抜きそうです。

 

スーパーワイルドカードウィークエンドと題されたプレイオフは、日本時間の1月10日午前3時(9日深夜)から開幕します。現地ナイトゲームは日本時間10時15分キックオフとなりますので、緊急事態宣言下で予定のない方はぜひご覧ください。

(ここだけの話ナイトゲームは面白くない試合になる確率が高そうなので早起きして他の試合を見ることをおすすめしたいですが)